人類の進化 ✕ AIの進化 ✕ 教育の深化


生成AIの普及やAgentic AI・Physical AIの台頭は、社会や生活・仕事のあり方を大きく変えつつある。AIが高度化し、知識生成や問題解決の多くを担う社会において、人間が学び教える意味はどこにあるのか。AIができることが急拡大する時代に、学習・教育の意味・価値・目的は何なのかを、大学・学校教育から個人の学習に至るまで、教育現場での事例を踏まえて広範に多様な観点から再考し模索する。


日時と場所

2026年8月17日(月)13:20-15:20


パネリストと講演題目


田中 一孝(桜美林大学 リベラルアーツ学群 准教授)


桜美林大学リベラルアーツ学群准教授。京都大学文学部卒業、京都大学文学研究科修士課程修了、京都大学博士課程研究指導認定退学、京都大学博士(文学)。専門は西洋古代哲学史、哲学・倫理教育、人文情報学。セントアンドリュース大学古典学部客員研究員、京都大学高等教育研究開発推進センター特定助教、桜美林大学専任講師を経て現職。国際プラトン学会アジア・オーストラリア・アフリカ地域代表、古代哲学研究ネットワーク幹事、大学教育学会課題研究「高等教育における生成AI利用のガイドラインに関する研究」代表。古典研究のためのAIシステム、ヒューマニテクストシリーズを名古屋大学・東京大学と共同開発、運用。


生成AI時代の授業外学習 ― 学習プロセスへの信頼をどう築くか


生成AIの普及は、大学教育における授業外課題と評価の前提を揺るがしている。とりわけ初年次教育や基礎的科目では、授業外課題に生成AIがどのように関与しているのかが判別が難しくなり、教員は利用の有無や方法を警戒する一方、学生は不正を疑われないよう慎重に振る舞う状況が生まれている。その結果、対面でのパフォーマンス課題の重視や紙媒体による課題への回帰も見られる。これは信頼性確保の試みである一方、コロナ禍で充実したデジタル学習環境からの後退ともいえる。本講演では、開発したシステムの紹介を通じて、生成AIの利用を前提とした学習プロセスへの信頼のあり方を検討しながら、授業外学習をより豊かにする方法を論じる。

近藤 雪絵(立命館大学 薬学部 教授 / 教学部 副部長)


立命館大学薬学部教授。立命館大学大学院言語教育情報研究科修士課程修了、関西学院大学大学院言語コミュニケーション文化研究科博士後期課程修了。博士(言語コミュニケーション文化)。専門は薬学英語教育、リーダーシップ、生成AI・機械翻訳の教育活用。立命館大学における「プロジェクト発信型英語プログラム(PEP)」の実践・運営に携わり、薬学・生命科学系学生を対象とした発信型英語教育、教材開発、短期留学の教育効果の検証などに取り組んでいる。共著書に『AI・機械翻訳と英語学習―教育実践から見えてきた未来―』(朝日出版)、『プロジェクト発信型英語プログラム―自分軸を鍛える「教えない」教育―』(北大路書房)などがある。


AI時代に育む「自分の言葉」—表現の主体性に着目して—


生成AIの進化により、整った文章や見栄えのよい成果物を生み出すことの価値は変化しつつある。この時代だからこそ、学びにおいて重要なのは、その表現が発信者自身の問い、経験、思考を通して生み出された「自分の言葉」となっているかどうかである。本講演では、AIや機械翻訳を活用したプロジェクト発信型英語教育の実践と研究を手がかりに、表現の主体性について掘り下げる。さらに、学習者が自らにとって意味のある表現をつくり、それを他者へ届けていくプロセスを検討する。

坂村 健(東洋大学 INIAD cHUB 機構長・教授 / 東京大学名誉教授 / YRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長)


INIAD cHUB(東洋大学情報連携学学術実業連携機構) 機構長。東京大学名誉教授。工学博士。IEEEライフ・フェロー、ゴールデンコアメンバー。2002年1月よりYRPユビキタス・ ネットワーキング研究所長。 オープンなコンピュータアーキテクチャTRONを構築。現在TRONはIoTのためのIEEE(米国電気電子学会)標準組込OS として世界中で多数使われており、2023年「TRONリアルタイムOS ファミリー」 、2024年「トロン電脳住宅」がIEEE Milestone として認定された。2015年ITU(国際電気通信連合)創設150周年を記念して、情報通信のイノベーション、促進、発展を通じて、世界中の人々の生活向上に多大な功績のあった世界の6 人の中の一人としてITU150Awardを受賞。2023年 IEEE Masaru Ibuka Consumer TechnologyAward 受賞。他に2024年瑞宝中綬章、2006年日本学士院賞、2003年紫綬褒章。著書に『DXとは何か』、『IoTとは何か』(角川書店)、『イノベーションはいかに起こすか』(NHK 出版)など多数。



司会者・指定討論者


飯吉 透(京都大学 学術情報メディアセンター教授・教育学研究科教授 / CIEC会長理事)


京都大学学術情報メディアセンター教授・教育学研究科教授。国際基督教大学・同大学院 (教育工学)を経て、フロリダ州立大学大学院博士課程修了。Ph.D.(教授システム学)。カーネギー財団知識メディア研究所所長、東京大学大学院情報学環客員教授、マサチューセッツ工科大学教育イノベーション・テクノロジー局シニアストラテジストなどを歴任。20年近くの在米生活の後2012年に帰国し、京都大学にて高等教育研究開発推進センター長・教授、教育担当理事補等を務める。コンピュータ利用教育学会(CIEC)会長理事、日本マイクロクレデンシャル機構副理事長、日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)理事。専門は教育イノベーション・高等教育システム。