各企画案内

2011年8月6日(土)

【基調講演1】

「世界の市民社会化と電子情報教育の重要性」 庄司 興吉(全国大学生活協同組合連合会 会長理事)

 世界は予想以上の早さで市民社会化してきているが,その推進役となってきているのが電子情報コミュニケーションである。ウィキリークスに象徴されるような情報公開徹底要求の市民運動が,自由と民主主義を標榜しながら「帝国」と非難されるような超大国の世界支配に変革を迫っている。未市民社会を市民化し,市民社会の脱市民化を防ぐために,途上国市民と先進国市民の連携が必要であるが,フェースブックなど後者が生み出して世界に普及させたコミュニケーション手段が前者に利用され,中東世界の独裁制のあいつぐ打倒などに役割を果たしている。東日本の太平洋岸で起こった地震と津波が福島第一原発の事故を引き起こし,大震災を拡大かつ深刻化させているが,これらについても世界の市民たちは,徹底した情報公開と事故の急速な収束を要求しつつ,マスコミをも巻き込んだコミュニケーションの重層化によって,被災地の復興と想定される最大の自然災害にもたえうる新社会構築への道を開こうとしてきている。

 こうして世界的に成長しつつある21世紀型市民,すなわち電子情報コミュニケーションを最大限に利用し,自らの属する国民社会をくり返し民主化しつつ,それを越えて国際社会,世界社会,地球社会をも急速に民主化していく市民を養成するために,コンピュータを利用した教育のいっそうの拡大と改善が必要である。それはもちろん第一にコンピュータ利用技術の教育であるが,同時にその意味,すなわちこの技術によってつくられていく新たな社会文化世界の,くり返し自らを更新していく新しい意味についての教育でもなければならない。政治や経済の民主化を越えて,社会の市民化を主張する理由はここにある。市民化は実質的主権者化を意味し,これからの社会のあり方を掛け値なしに市民たちが決めていくことを意味するからである。コンピュータ利用教育の普及と発展に協同組合がかかわる意義も,ここにある。

略歴:全国大学生活協同組合連合会会長理事。東京大学名誉教授。法政大学助教授,東京大学教授をへて清泉女子大学教授。現代社会論から出発し,近代化,産業化,管理化などとの関連で早くから情報化を論ずる。他方で先進社会論から南北関係論・東西関係論などをへて視野を世界社会から地球社会に広げ,並行して変革主体論を階級論から新しい意味の市民論に高めつつ,地球市民社会の電子情報コミュニケーションによる形成を論じて,現在にいたる。

【基調講演2】

「教育イノベーション第3期に向けてーメディア環境の変容と多様化の中の学びに関するイシューを整理するー」
妹尾 堅一郎(CIEC会長:東京大学 知的資産経営総括寄附講座特任教授)

 現在3つの「情報化」が進んでいます。第一は,社会基盤としての情報化。19世紀のモノ,20世紀のエネルギーに続き,21世紀は情報という世界観に基づく社会形成が進展しています。第二は,脱工業社会としての情報化。工業社会から情報社会への移行期として「情報化社会」は,前後の時代の問題と解決に多大な影響を与えています。そして第三は「スマート化」という情報化。これは,モノへの情報タグがつく(チップユビキタス),エネルギーに情報タグがつく(スマートグリッド),さらには情報そのものに情報タグがつく(クラウド)等を意味し,これらの3つのスマート化が相互関連することによって,産業を起点に生活や社会が大きく変容するでしょう。それらを背景に,ITイノベーションが,「アナログからデジタルへ」「スタンドアローンからネットワークトへ」を経て「モノ価値からサービス価値へ」と第3のモデル変容を進めていきます。これらを踏まえれば,メディア環境の進展に伴い,その中における学びの変容と多様化を促すことは当然と言えるでしょう。例えば,従来からの「知識伝授」から「学習支援」を経て,次の「互学互習」段階に移る教育モデルの変容といったことです。

 そこに極めて重要なイシューが出現しました。すなわち,「電子出版の本格化」と「オープンエデュケーション」の波です。電子出版の本格化は電子教材から電子教科書等を促進し,教育モデルのあり方自体を大きく変えていくでしょう。またネットワークを介したオープンエデュケーションの波は,これまた世界の教育,教育機関,教育ビジネス等のあり方自体を問い直す契機となりつつあります。これらを統合等に俯瞰すれば,教育もこれまた新たなイノベーション(モデル変容)を迎えることになります。

 他方,今回の東日本大震災は,情報メディア基盤の緊急時向け整備と運用の問題を浮き彫りにすると共に,ネットワークメディア活用による多様な意味での情報対応能力が極めて重要であるということを如実にしました。つまり,メディアの変容と多様化に伴う, 広義の「ネットワーク社会におけるメディア活用能力」を育成するという「コンピュータ利用教育」の必要性をあらためて検討し直す契機となったと言えます。また,こういう事態に際して,たとえ学校施設・設備が使えなくても「ネットワークを通じた学び」によって人々の教育が途絶えることなく継続展開することに,我々CIECの知見を活かすことが求められたわけです。

 これらを踏まえれば,我々はコンピュータ利用教育,メディア環境における学びに関わる研究者として,取り組むべき課題が数多くあることに「気づき」ます。そこから何を「学び」,そして何を「考え」「行動するか」,CIECにおける基本的な議論が今こそ必要ではないでしょうか。  以上を問題意識として,本基調講演では,教育論から産業論まで,あるいはIT論から社会論まで,その多様なイシュー群を整理し,CIECとして議論すべきことは何か,その起点を提案します。それは本PCカンファレンスにおいて,次のCIECの議論基盤の共有化を目指すことに他なりません。

略歴:CIEC(コンピュータ利用教育学会)会長,東京大学知的資産経営総括寄附講座特任教授,特定非営利活動法人産学連携推進機構理事長。一橋大学大学院,九州大学,放送大学の客員教授を兼務。平成20 年度産業財産権制度関係功労者表彰経済産業大臣表彰。内閣知的財産戦略本部「知的財産による競争力・国際標準化専門調査会」会長,同国際標準戦略タスクフォース座長,経済産業省「産業構造審議会競争力委員会」委員,総務省,文科省,警察庁等の委員。

【シンポジウム1】

「メディア環境と学び その変容と多様化—教育イノベーションの隠れたイシューを俯瞰するー」

 本シンポジウムでは,全体会基調講演「教育イノベーション第3期に向けて〜メディア環境の変容と多様化の中の学びに関するイシューを整理する〜」を受けた形で開催いたします。

 すなわち,急速に進展するメディア環境の変容と多様化を俯瞰的に見つつ,そのマクロなイノベーションの流れが教育に及ぼす影響を「教育イノベーション」の動きととらえ,そこに潜む多様なイシューについて多様な角度から議論し,多様な意味を抽出しようとする試みです。

特に,以下のイシューについて焦点を合わせたパネルセッションを予定します。

  1. 電子書籍
  2. オープンエデュケーション
  3. ソーシャルメディア(とマスメデイア)

 これらの進展に伴う,多様化する「知のあり方」について,メディア活用能力の育成から情報リテラシーや情報倫理といった「教育・人財育成」について,さらには「産業政策や文教政策」について等々,その変容から多様化まで考察を行う予定です。

パネリスト 熊坂 賢次(CIEC理事:慶應義塾大学 環境情報学部教授)
高田  仁(九州大学 経済学研究院産業マネジメント部門准教授)
花島 誠人(財団法人 地域開発研究所 主任研究員)
藤本  徹(東京大学 情報学環 特任助教)
モデレータ 妹尾 堅一郎(CIEC会長:東京大学 知的資産経営総括寄附講座特任教授)

【シンポジウム2】

「熊本大学の教育の情報化と情報教育—ICT環境整備からeラーニング,そして総合情報環へー」

 今回のPCCの開催校である熊本大学は,これまでシングルサインオン(統合認証)や熊本大学ポータルに対応する種々のサービスを連携したICT環境の整備,eラーニングの導入と普及,eラーニングを用いた全学情報リテラシー教育「情報基礎」の実施,eラーニングの専門家を育てるeラーニング大学院である「教授システム学専攻」の設置,eラーニングのさらなる学内普及のための「eラーニング推進機構」の設置といったように教育の情報化と情報教育の双方に戦略的に取り組んできていました。

 そしてこれらの成果に基づき,高度情報通信社会の急速な変化に対応するため,また,高度情報化キャンパス環境の高度化及び情報セキュリティの強化を推進するため,これまでの利用者(学生,教職員)に,卒業生,保護者,共同研究者,地域社会等を加えることで利用者層の拡大を図る「利用者の環」,eポートフォリオをはじめとした生涯に渡って活用できる「サービスの環」,全ての情報のデジタル化とOne Source Multi Useを推進する「データベースの環」学内LANの高帯域化・無線LANの広域化等による「インフラ基盤の環」これらの環を広げる「組織的・人的サポートの環」からなる「総合情報環構想2010」を2010年に策定し,取り組みを進めています。

 本シンポジウムでは,熊本大学のこれまでの取り組みとこれらの取り組みを,ICT環境整備と情報教育,eラーニング,総合情報環といった切り口から紹介します。熊本大学での Sakai CLE や Moodle などの FLOSS系の LMS のカスタマイズや活用事例も交え、教育のイノベーションを後押しするための大学や教育の情報化や情報教育,そしてICTを媒介とした大学と社会のつながりについて議論していきたいと考えています。

パネリスト 中野 裕司(熊本大学 教授システム学専攻教授・総合情報基盤センター長)
喜多 敏博(熊本大学 教授システム学専攻教授・eラーニング推進機構教授)
北村 士朗(熊本大学 教授システム学専攻准教授・総合情報基盤センター准教授・eラーニング推進機構准教授,CIEC理事)
モデレータ 筒井 洋一(京都精華大学 人文学部教授,CIEC副会長)

【ITフェアインデキシング】

 毎年好評の「インデキシングタイム」を初日8月6日の基調講演とシンポジウムの間に設けました。インデキシングとは「目次」のことです。ITフェア出展の各社にステージ上で1分間の「私のブースは面白いぞ」「新製品なので来てね」とアピールをしていただきます。つまり,ブース全体の「目次」セッションです。これを見た参加者が翌日7日に面白そうなブースへ殺到することになります。

【イブニングトーク】

イブニングトークは参加者のみなさんご自身で作る企画です。興味のあるテーマに分かれてざっくばらんに語り合います。みなさんの思いを伝え合い,実際の授業や活動に生かしていきませんか。

  1. テーマ:自己紹介をみんなでデザインしよう
  2. 【主旨】
    昨年のイブニングトークでは、プレゼンテーションをテーマにディスカッションを行い、多くの方々にご参加いただきました。今年はよりテーマを絞り、名刺交換時などにおける自己紹介のプレゼンテーションを考える、という内容を考えています。いっしょに「それぞれの」自己紹介をデザインしてみませんか。

    【参加対象】
    どなたでも。名刺交換が苦手な方、いつも自己紹介で困ってしまう方、あるいはプレゼンテーションについて思うことがある方、もちろん歓迎です。
    角南 北斗(フリーランスのWebデザイナー)

  3. テーマ:Post PC時代の教育の在り方を想像する
  4. 【主旨】
    iPhoneの登場以後、Post PC era(PCの次の時代)という言葉が囁かれ始め、Appleは今年の開発者会議で、クラウドを背景にPost PCを掲げました。近年、モバイルラーニングなどが活発になってきました。一緒にPost PCや、その教育の在り方について語ってみませんか。

    【参加対象】
    携帯情報端末などを用いた教育に関心のある方
    曽我 聡起(北海道文教大学)

  5. テーマ:パソコン講習会運営団体に求められるスキルとは
  6. 【主旨】
    大学生がパソコン講習会を運営するにあたって、短期間での世代交代が免れない。大学生に限らず、団体内でも技術力の格差がある。その差をどう扱うのか、埋めるとすればどのような方法があるか、情報交換をし、団体内での新人教育や技術向上の方法を考える。

    【参加対象】
    学生、パソコン講習会関係者、生協職員
    石橋 充子(北海道大学/北海道大学生活協同組合)

  7. テーマ:生徒の思考特性・行動特性データを活用した新たな教授法の提案
  8. 【主旨】
    思考や行動のパターンは人それぞれ。教員は自らの思考特性と行動特性にもとづき課題や資料を作り、授業を進めてきた。脳科学の発展により、生徒の思考特性や行動特性を客観的な数値データで現すことが可能となり、生徒の特性に応じた個別対応が可能となった。早稲田大学高等学院中等部での取り組みや企業の人材研修の事例を紹介しながら、思考特性と行動特性の違いが意思伝達に及ぼす影響を体感してもらいます。

    【参加対象】
    生徒やご自身の特性を知りたい方
    河口 紅(NPO法人さんぴぃす)

  9. テーマ:大学の先輩の知識・知恵・経験を伝えるパソコン講習会作りについて
  10. 【主旨】
    新入生向けにパソコンの講習会を大学生協の方とともに開催をしています。講習会ではパソコンやソフトの利用方法を教えるだけでなく、大学の先輩として講義や研究などで必要になる知識・経験を伝える講習会を開催していくことを今後も続けていきたいと思っています。先輩からの知識・知恵・経験を入学に近い早い段階で伝えることで、より高度な勉学研究を行うことができると考えています。

    【参加対象】
    大学生協で新入生向けパソコンに関わる方、大学内で講習会を開催している方
    細田 遼(東京農工大学)

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2011年8月7日(日)

【ITフェア】

 IT技術の進歩により,私たちの生活は大きな変化を遂げています。恒例のITフェアには,多くのコンピュータや教育関連企業の方にご出展をいただいております。各分野の「最新」「最先端」の技術の情報が入手でき,実際に機器やソフトを試すことができます。教育・研究素材の収集や交流の場として大変好評を得ております。

【企業セッション】

企業の皆様に,実物などを交えながら技術トピックスの教育利用の具体的な実践例を発表いただくなど,より具体的な実践方法を紹介していただきます。

2011年8月7日(日)
9:00-11:45/ 14:40-18:00

【分科会 口頭発表・ポスターセッション】

口頭発表98本,ポスターセッション41本の発表があります。

口頭発表

2011年8月7日(日)
9:00-11:45/ 14:40-18:00
2011年8月8日(月)
9:00-10:35

ポスターセッション

2011年8月7日(日)
13:30-14:30

詳細は分科会タイムテーブルをご覧ください。

【レセプション】

 2日目の夜に行われるレセプションは地元ならではの食材や飲料をご用意して歓迎する立食パーティ形式です。多くの参加者,ITフェアご出展企業の皆様と交流できる和やかな懇談の場です。お気軽にご参加ください。※参加申し込みと一緒にお申し込みください。

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2011年8月8日(月)

【セミナー1】

「CIEC会誌『コンピュータ&エデュケーション』をより良くするために-なぜリジェクトされるのか-」

 『コンピュータ&エデュケーション』も30号を発刊し,創刊以来16年目を迎えました。編集委員会の査読方針としましては,創刊号より一貫して投稿論文をより良いものとしていただき,できうる限り掲載するということに努めてきました。しかし,残念なことに掲載を不可とせざるを得ない投稿論文があるのも事実です。

 PCカンファレンスでは過去2回にわたりまして編集委員会がセミナーを開催してきましたが,これまではどのような論文を投稿していただきたいかという観点から編集委員会の考えをお伝えし,会員の皆さまの御意見,御批判をお聞きしてきました。今回のセミナーでは,掲載を不可とせざるを得なかった代表的な事例を取り上げ(実際の投稿論文をそのまま取り上げることはできませんが),編集委員会が不可とした理由をお話しし,委員会としての考えを改めて会員の皆さまにお伝えするとともに,会員の皆さまの御批判を仰ぎたいと考えています。  またこの場を借りてお伝えしたいことは,『コンピュータ&エデュケーション』が創刊以来各号ごとの論文募集形式を取っているために,募集から締切および発刊までの時間が限られてしまい,これまで改稿の時間的な制約から投稿を辞退されるケースが見られたということです。結果として掲載できなかった投稿論文があったのは事実ですが,これらについては次々号への掲載を否定するものではありません。また随時の投稿を拒否しているわけではありませんし,実際にそのような投稿を受理してきました。

 今回のセミナーにふるって参加下さり,『コンピュータ&エデュケーション』への投稿をお考えいただく機会にしていただければと考えています。

パネリスト 田中 一郎(金沢大学 大学院自然科学研究科教授)
大木 誠一(神戸国際大学附属高等学校教諭)
籠谷 和弘(関東学院大学 法学部教授)
中村  彰(秋田大学 大学院医学系研究科教授)

【セミナー2】

「教え手として学ぶ」ということ

 CIECには,多くの大学生協職員が所属しています。

 大学生協職員は研究者ではありませんが,学生にコンピュータを供給し使いこなしをサポートするという仕事をはじめ,さまざまな場面で学びに貢献していると自負しています。

 その学びの場面のひとつに,新入生歓迎企画やパソコン講習会などを上級生スタッフと一緒に企画し運営するという取り組みのなかで生み出されているものがあります。そのなかで新入生は大学生活への不安を解消したり,パソコンの使い方を学ぶことができます。一方で企画してきた上級生たちも,新入生に教えるなかで学び,成長しています。入学時は不安を解消してもらう側であった新入生たちが上級生となり,今度は教え手として成長していく,という教えあい,学びあいが続いていきます。

 本セミナーでは,大学生協職員自身も関わっているこうした学び・成長という営みを,学会というアカデミックな場で,人材育成の専門家である先生方のお力を借りて評価してみたいと考えました。

 なかでも,上級生たちが「教え手として学ぶ」姿に着目したいと考えています。それは人材が成長し取り組みや組織が継続していく力が育まれる過程には必ずや存在し,そのことを評価することに大変意味のある要素だと考えるからです。 

 本テーマは,学びとコンピュータにかかわるすべての参加者に興味をお持ちいただけると思います。教員,学生,院生,生協職員,企業の方々,その他すべての参加者の方と一緒に議論出来ることを期待しています。

パネリスト 橋上 実穂(熊本大学文学部4回生 新入生サポートセンター学生スタッフ)
芳賀 祐馬(京都大学農学部4回生 PCサポート講座コアスタッフ)
国崎 伸昭(東京農業大学生協購買書籍部)
モデレータ 北村 士朗(CIEC理事:熊本大学 教授システム学専攻准教授)

【セミナー3】

「マイケル・サンデル教授「白熱教室」のスタイルを検討する-講義形式の限界と可能性の再確認-」

 ハーバード大学のマイケル・サンデル教授が行う「正義論」の授業は,NHK教育TVでの放映を切掛けに,日本に「白熱教室」の一大ブームを起こしました。書籍は70万部を超える売り上げを記録し,さらに関連・類似番組や書籍の発刊を促しています。

 本セミナーは,その授業内容(政治哲学)そのものに踏み込むのではなく,その授業スタイル(インタラクティブな講義形式)について,授業形態論・モデル論の立場から検討・考察を加えるものです。

 この「白熱授業」の背後には,実は,TA(ティーチングアシスタント)の存在や,リーディングス(論文集)といった教材・教育支援環境が潜んでいます。それらを含め,この授業を多様な角度から評価し,それを起点に講義形式の限界と可能性について考察を進めたいと考えています。

 授業法のあり方を考えたい方々に多くご参加をしていただきたく思います。

パネリスト 伊藤 洋典(2011PCカンファレンス実行委員長:熊本大学 法学部教授)
北村 士朗(CIEC理事:熊本大学 教授システム学専攻准教授)
長岡 健(CIEC理事:法政大学 経営学部教授)
藤本 徹(東京大学 情報学環特任助教)
モデレータ 妹尾 堅一郎(CIEC会長:東京大学 知的資産経営総括寄附講座特任教授)

【セミナー4】

「電子黒板・デジタル教材と学びの進化」

 平成23年度から順次実施される新学習指導要領に向けて,全国の学校に電子黒板が導入されるなど「教育の情報化」への動きが活発である。昨年の夏には「教育の情報化ビジョン」が公表され,教育現場への情報通信技術の導入が今後ますます加速することが予想される。また,情報通信技術の活用に向けた教員研修や先進事例の発表など,ソフト面での対応も進んでいる。

 一方で各地の研究会等で紹介される実践事例の多くが一部のエキスパートによる機器の華麗な使いこなしの披露になりがちで,児童・生徒の学びという視点で,新しい可能性にまで言及した紹介は必ずしも十分とは言えない。また,教育の情報化に際しては授業実践だけでなく,機器の導入・運用管理や教材の準備など教員に多くの負担を強いることになりがちである。こうした面での協力体制の構築,学校内外の協力者への教員のネットワークの在り方も課題である。

 本セミナーでは,電子黒板やデジタル教材によって,児童・生徒の学びが具体的にどのように進化しようとしているのか,その本質を探るとともに,今後,機器の利用に取り組もうとしている先生方にとっても「これならできる,やろう」と思えるような,無理なく効果的な使い方を模索し,紹介することを目指す。

 前半ではまず模擬授業を通して電子黒板を使用した授業実践を会場全体で体感し,続いて各方面で活躍されるパネリストから事例を紹介いただくとともに,この機器の利用に関して様々な視点から意見をいただく。

 後半は会場からの意見も積極的に取り入れて,学校教育における電子黒板・デジタル教材のこれからについて議論したい。

授業者 永野 直(千葉県立袖ヶ浦高等学校教諭)
パネリスト 寺嶋 浩介(長崎大学大学院教育学研究科准教授)
久保田 勲(山梨県甲斐市立双葉東小学校教諭)
奥山 賢一(山梨県北杜市立高根北小学校校長)
永野 直(千葉県立袖ヶ浦高等学校教諭)
モデレータ 大橋 真也(CIEC小中高部会 千葉県立船橋啓明高等学校教諭)

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プレカンファレンス(8月6日)

「モバイルラーニング向けの教材作成支援サービス体験学習」

 昨年,iPadの登場によって,高機能タブレット型端末がにわかに携帯型情報機器の新たな主役として注目されはじめ,スマートフォンの急速な普及やWi-Fiサービスの全国的なエリア拡大とあいまって,モバイルラーニングの環境がいよいよ充実してきました。残る問題は,教材コンテンツをいかにして教員自身が容易に短時間で作成,配信するかということですが,携帯端末特有の操作性や画面サイズの制約などから,オーサリングを含めて,実作業の面では様々な困難を伴っているのが実情です。今回のワークショップでは,まず,プログラミングなどの専門知識を必要とせず,効率的かつモバイルラーニングに特化した教材作成支援サービスとして2009年からiPhone向けの配信を開始したインフォテリア社のHandbookを開発元の代表者自身が紹介します。Handbookは,これまで全国の主要大学で採用された実績を有するのみならず,民間企業でもペーパーレス会議資料や商品カタログ,社内情報の共有手段,研修用教材配信サービスとして採用される事例が着実に増えてきています。そうした事例の紹介に続いて,実際にクラウド上のコンテンツ作成支援サービスを利用して教材を自作する手続きについて,実演を交えながら説明します。その後,参加者が会場内のPCからデモサイトにログインして簡単な教材を試作し,持参したタブレットPCまたはスマートフォンを介して試作用教材を閲覧(ダウンロードも可能)する体験学習の時間を設ける予定です。

講師 インフォテリア株式会社代表取締役 平野 洋一郎
パナソニック電工インフォメーションシステムズ 山内 浩之

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