各企画案内

8月8日(金)

【プレカンファレンス1】9:00−12:00
体験型企画:描いた絵が動き出す!!みんなびっくり『紙アプリ』

多くの子どもたちはお絵描きが大好きです。ところが上手・下手という評価が気になって自由な表現にだんだんブレーキがかかってしまうことはないでしょうか。

紙アプリは紙に描いた絵が 3DCG の中を動き回るようなアプリケーション群です。描いた絵の色使いや形などが動きや能力に反映されます。それは自分の描いた絵に命が吹き込まれるような感覚です。たとえば「紙アクアリウム」では,描いた魚などが個性的に泳ぎ回り,賑やかな海の世界が創られていきます。「紙レーサー」では,描かれたクルマが立体化してサーキットを走り,ステアリング性能の低いクルマがスピンしている間に加速性能の高いクルマに抜かれるなどのドラマが生まれます。最初は恥ずかしがっていた子どもたちも,次第に「こんなの描いたらどうなるだろう」と,個性あふれるお絵描きに熱中していく様子が見られます。

本企画の主催者である株式会社リコーと大妻女子大学の生田は,八王子市や多摩市,府中市,筑波大学附属学校などで,生田ゼミの学生が制作した「マルチメディアを扱えるドットコードを用いて開発した教材」や「文や文節と同期をとって読上げを行う電子書籍」と,この「紙アプリ」で「学校を美術館・博物館に変身!」させる活動を行なっています。プレカンファレンスではこれらのコンテンツを体験していただこうと思います。

PC Conferenceの主催校である札幌学院大学の周辺の保育園や幼稚園の皆さん,小学校の児童の皆さん,カンファレンス参加者の皆さんに,この新しいお絵描きの楽しみを体験していただきたいと思います。プレカンファレンス会場に集まった人にしか作れない素敵な海の世界やドラマチックなカーレースが生まれることを楽しみにしております。「学校を美術館・博物館に変身!」プロジェクトの様子を下記からご覧ください。

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【プレカンファレンス2】9:00−12:00
JMOOC講座ワークショップ「オープンエデュケーションを創って学ぼう!」
講師:重田 勝介(北海道大学),武田 俊之(関西学院大学),森 秀樹(大阪大学)

近年,インターネット上で誰でも無料でオンライン講座を受けることができる取組み「MOOC(Massive Open Online Course):大規模公開オンライン講座」が拡がっています。我が国においても日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)が設立され,MOOC普及に向けた動きが活発になっています。

このプレカンファレンスでは,JMOOC公認のMOOCプロバイダ「gacco」が開講する講座「オープンエデュケーションと未来の学び」における,公開講座を実施します。この公開講座では,オンラインで学習した内容をもとに,最終課題の「未来のストーリー」(仮題)を作成するワークショップを行います。デザイン思考とシナリオプランニングの方法を使い,グループでの議論で『オープンエデュケーション』について理解を深めながら,アイデアをふくらませて,実りある豊かな未来像を描きます。

ワークショップでみなさまとご一緒できますことを楽しみにしております。

注意点

このワークショップへの参加には,別途gacco上で「反転授業コース(札幌会場)への登録と,gacco上で4週間のオンライン講座を受講することが必要です。登録と受講は以下ページよりお願いいたします。 https://lms.gacco.org/courses/gacco/ga004/2014_07/about

このワークショップのみ参加する場合,PCカンファレンスへの参加申込は不要です。

参加費 5,000円(おみやげ付き)
※PCカンファレンス参加費とは別途になります。
定員 50名

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■ 全体会・基調講演■ 12:15−14:30

【基調講演1】 「“コンピュータ利用教育”を再考する-イノベーション社会における知の変容と多様化-」
妹尾 堅一郎(CIEC会長理事,NPO法人産学連携推進機構理事長)

CIEC(コンピュータ利用教育学会)は,教育工学の学会ではない。学術会議登録は「教育」である。そして,我々は「メディア社会における学び」について,なぜ必要か,それはどのようなものであるか,そしてどうすればできるのか,等々について,悩み・考えてきた。そのために,多様な分野・領域の専門家である学会員の皆様の交流を通じて,新たな知見の創出や先駆的実践を試みてきたのである。

その歩みは,「知識伝授をどうコンピュータで効果的・効率的に行うか」という問いから始まり,「学習支援のコミュニティをどうメディア社会の中で構築するか」を経て,「互学互習を通じて気づき・学び・考える文化を,どう学内外を問わず育むか」という段階を踏んできたとも言えよう。

この三段階は,実は期せずしてネットワーク社会の進展と同期してきたように見える。すなわち,ダウンロードを中心にしたWeb1.0の社会から,アップロードを中心にしたWeb2.0の社会を経て,現在のSNSに代表されるような横断的なネットワークの社会である。

他方,デジタルネットワークの進展によって,グローバルに生活・社会・産業等は変容と多様化を加速化しつつある。イノベーション(モデル創新)が同時多発的かつ連続的に進展し始めた。イノベーションとは技術革新のことではなく,社会の価値そのものを根底から新しいものへ置き換えることである。その動きは,必然的に「教育」そのものの意味と有り様,すなわち「知」そのものに関する世界観を覆すだろう。
そこで,本基調講演では,これらの動向を整理すると共に,この「メディアと学び」の歩みの意味を探ること(現在までの総括)と,これから我々がなすべきこと(今後の展望)について考えていきたい。それが,CIEC会員とPCC2014参加者の皆さんと共に考えるための,一つの起点的叩き台になれば幸甚である。

略歴:NPO法人産学連携推進機構理事長,一橋大学大学院MBA ,九州大学客員教授。慶應義塾大学経済学部卒業後,富士写真フイルム株式会社を経て,英国国立ランカスター大学経営大学院博士課程満期退学。産能大学,慶應義塾大学,東京大学等を歴任。平成20 年度経済産業大臣表彰。内閣知的財産戦略本部専門調査会前会長,農林水産省技術会議委員他,多くの省庁委員や大手企業役員等を務める。専門は,ビジネスモデルと知財マネジメント,問題学・構想学,先端人財育成。著書『技術力で勝る日本が,なぜ事業で負けるのか』(ダイヤモンド社 2009)他多数。

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【基調講演2】 「地方からの学びイノベーション」
熊坂 賢次(慶應義塾大学環境情報学部教授)

 地方という空間表現は,インターネットという情報空間がそこに重層化されることで,どのような意味変容をもたらしたのだろうか。しかもその変容に同期して,教育のありようはどう変容しようとしているのか,そこで期待される未来を創造する教育とはいかなる行為なのだろうか。このような難題に,少しでも接近できることを願って,「地方からの学びイノベーション」というテーマで話題を提供したいと思う。

かつてといっても,戦後から産業化の時代にあって,地方は,中央と地方という対抗軸の中で位置づけられ,機能分担の視点からまずは日本社会全体の構造化が語られ,その構造を維持するために地方の役割とはなにかが語られていた。この機能論では,機能の非対称性に着目すると,中央の上位と地方の下位という,地方は,中央のための地方であり,中央が成果を上げるための手段として価値がある,という位置づけになっていた。これは教育においても貫かれた論理であり,地方での教育は,一方では中央で活躍する人材を輩出するために,他方では地方に残る人材をそれなりに「普通の人」として育成するための教育であった。この教育体制は,日本社会の産業化を支えた重要な制度であった。
しかし1995年以降のインターネットを起爆剤とした先端的なテクノロジーと多様なメディアの登場は,その可能性として,去年のテーマであったMOOCsのように,従来からの教育システムについて,その理念から組織制度や施設環境そして具体的な現場での教育/学びにいたるまで,それらすべてを激しく揺るがすパワーを発揮している。

このインパクトは,地方での教育にも波及することは必至であり,すでに変革の兆しは多くのところで発生している。それは「“ふつう”という多様性」の概念で括れるかもしれない。かつてのマス(大衆)という普通の人材を教育するのではなく,「おしゃべりなロングテール」と呼ぶ,「“ふつう”だからこそ多様な可能性をもった人」が学びのイノベーションを生成する主役になりつつある。このような学びのイノベーションという切り口にこそ,地方での教育の未来を創造する新しい契機があると思う。

略歴:慶應義塾大学環境情報学部教授,公益財団法人ソフトピアジャパン理事長。1976 慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了。専門は,ライフスタイル論,ネットワーク社会論。主な著書に「行動と社会」(1982)や「社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法」(共著;2011)等。社会実験的な社会調査やフィールドワークを数多く実施し,消費社会や情報社会における多様なライフスタイルの解釈を研究テーマとしている。

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【シンポジウム1】16:00—18:00
「地方におけるICT教育と授業活用 -北海道を例としてー」

2003年に高校普通教科「情報」が必修化され10年余りが経過しています。この必修化は,高校はもとより,大学の情報教育にも大きな変化をもたらしました。その後,地方においても通信ネットワーク利用環境の整備がすすみ,携帯電話・スマートフォンが普及し,徐々にタブレット型端末が教室に入り始めています。若者達は新しいデバイスや通信サービスを教室の外で自在に使いこなしています。このような状況のなかで,「地方におけるICT教育と授業活用」はどのように行われているのでしょうか?

また,将来に向けてICT教育の役割はどのように位置づけていけばよいのでしょうか?ICTは学校教育をどのように支え,変えていけるのでしょうか?このシンポジウムでは,北海道を例とした話題提供をもとに,地方の教育を担っている方々に,ICT利活用の視点を入れながら教育の現状と課題についての情報共有・意見交換を行っていただき,未来に向けた方向性を模索いたします。

講演1 「小学校における日常的なICT活用」新保 元康(札幌市立幌西小学校校長)

講演2 「高校におけるICT教育と共通教科『情報』」杉本 式史(北海道札幌新川高等学校情報担当)

講演3 「地域のICT活用教育における大学の役割」小松川 浩(千歳科学技術大学総合光科学部教授)

講演4 「地方大学の教育改善とICT」石川 千温(札幌学院大学経営学部教授・教学担当副学長)

司会  皆川 雅章(札幌学院大学社会情報学部教授,CIEC北海道支部長)

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【シンポジウム2】16:00—18:00
「新しい研究・産業領域におけるコンピュータ利用とその教育」

今や,センサーデータや行動ログがあらゆるとことで取得・蓄積されるようになり,また人々の行動がネットワークによって変容と多様化を加速しています。それらを起点として,多様な新しい研究領域・産業領域が生まれてきています。例えば,3Dプリンターを駆使するためのCADデータ創作,クラウド場のビックデータを解析してサービス活用に繋げるデータサイエンス,集合知を活用するクラウドソーシング,あらゆる人の行為に関連してそれを変容させるゲーミフィケーション,さらに工業系におけるセンサーとコンピューティングが融合するインダストリアルインターネット,植物工場をはじめとする農林水産におけるIT活用,そして世界中のあらゆる人を相手にするMOOC教育の加速化などです。つまり,社会は大変動期に突入したと言っても過言ではないでしょう。

この動きは,従来とは「コンピュータ利用」の意味が大きく変容と多様化をしつつあることを意味します。

そこで,「メディア社会における学び」をその研究対象としてきたCIEC(コンピュータ利用教育学会)は,この時期をとらまえて「新しい研究・産業領域におけるコンピュータ利用とその教育」を直視し,それらの活動におけるコンピュータと教育について考察を行うことが必要ではないでしょうか。

今年のPCカンファレンスは,シンポジウムとして本テーマをとりあげ,各分野の専門家によるパネルディスカッションを行うことにします。

 

パネリスト(五十音順)

池田靖史(慶應義塾大学環境情報学部教授,建築家)
久夛良木 健(サイバーアイ・エンタテインメント株式会社代表取締役社長 CEO , 元ソニー(株)副社長、プレイステーション開発者)
齊藤 秀(株式会社オプト最高解析責任者 CAO(Chief Analytics Officer))
三上浩司(東京工科大学大学院メディアサイエンス専攻 准教授)

モデレータ

妹尾堅一郎(NPO法人産学連携推進機構理事長, 一橋大学大学院商学研究科客員教授,CIEC学会会長理事)

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【ITフェアインデキシング】14:35—15:45

毎年好評の「インデキシングタイム」を初日8月8日の基調講演とシンポジウムの間に設けました。インデキシングとは「目次」のことです。ITフェア出展の各社にステージ上で1分間の「私のブースは面白いぞ」「新製品なので来てね」とアピールをしていただきます。つまり,ブース全体の「目次」セッションです。これを見た参加者が翌日9日に興味があるブースへ直行することになります。

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【イブニングセッション:ワークショップ型】18:20−20:00

参加者の方々から企画を公募し,下記のテーマで実施することになりました。軽食をとりながら,ざっくばらんに語り合います。みなさんの思いを伝え合い,情報交換をして実際の授業や活動に生かしていきませんか。(参加費:500円)

(1)「医療ICTの進歩と教育II」
主催者:神崎 秀嗣(京都大学ウイルス研究所/大和大学医療保健学部)  

主催者は臨床検査技師養成校において情報教育に携わっている1, 2)。これまで医療従事者にとって情報科学は必ずしも必要な学問ではなかった。しかし検査機器の進歩と高度化,日本での医師不足の解決や医師業務の負担増から医療機関内の電子カルテの普及やon line化,クラウド化によってPC含めた情報科学技術は必要になってきており,医療従事者の国家試験にも情報科学の分野が出題されるようになってきた。またスマートフォン/タブレットも医療現場に登場し始めた1, 2)。近年のICT環境の進歩と医療系への導入を考えるとICT教育の岐路に立っているように思われる。そこで,今回,昨年に引き続き,イブニングセッション「医療ICTの進歩と教育」IIを企画した。様々な医療に関係する方だけでなく教育関係者にも参加して頂き,iBook authors/Kindleを活用した医療機関で即戦力として役立つICT教育の試みを討論したい。(1)神崎秀嗣他: 臨床検査技師養成における携帯情報通信端末利用教育の必要性と教育プログラムの開発. キャリアデザイン研究, 9, 201-209, 2013.(2) 神崎秀嗣他:医療系養成校の情報科学教育の現状と問題点,そしてスマートフォン,タブレットの医療系養成校への適用の提案. 数学教育学会誌, Vol. 53, No.3•4, 131- 143, 2013.

(2)外国語教員のためのEPUB(電子書籍)作成講座
主催者:清原 文代(大阪府立大学高等教育推進機構外国語教育センター)

EPUBは実質的に電子書籍の世界標準と言ってよい規格である。EPUB3からは,画像に加えて音声や動画を内包することができ,更に音声の再生と同期してテキストがハイライト表示されるメディア・オーバーレイにも対応し,EPUBで外国語教材を作成する環境が整ったと言える。EPUBは特定の企業に依存しないオープンな規格であり,EPUBを読むためのソフトウェアやEPUBを作成するためのソフトウェアの開発は個々に進められている。EPUB3に関して,最近ようやく教員にも扱える閲覧環境及び作成環境が整いつつある。本講座では吉田晴世・野澤和典編著『最新ICTを活用した私の外国語授業』(丸善プラネット,2013年)の第2部実践編第11章 清原文代「PDFとEPUBによる音声付き中国語教材について」において紹介したEPUB3の閲覧環境及び作成環境から主なものを選び,デモンストレーションと情報交換を行う。

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【イブニングセッション:交流型】18:20−20:00

参加者の方々から企画を公募し,下記のテーマで実施する事になりました。ワークショップという「学びの場」に関心のある方々や,口頭発表やポスターセッションでは伝わりにくい実践・研究上の効果や課題について意見交換の場を持ちたいと考えている方々の参加をお待ちしています。(参加費:500円)

(1)デジタル教科書の匠になろう -自作デジタル教科書の現状-
主催者/共催者:曽我 聡起(千歳科学技術大学総合光科学部)/川名 典人(札幌国際大学観光学部) 中村 泰之(名古屋大学大学院情報科学研究科)/中原 敬広(合同会社三玄舎)  

本イブニングセッションでは,自身の授業や学習用のデジタル書籍(教科書)を自ら作成した方々に,それぞれのデジタル教科書を紹介していただく。教育現場でタブレット端末が利用されるようになり,出版社からは紙媒体の教科書を元にしたデジタル教科書がリリースされ,デジタル教科書の正規化に向かいつつあることが実感されるようになってきた。こうしたデジタル教科書を購入する以外に,教員自身がデジタル教科書を自由に作成する環境も既に整備されつつある。デジタル書籍のオープンな規格として世界中で利用されているEPUBや,Appleが提供しているiBooksなどのオーサリングツールも準備されている。今回は,こうした環境を利用して,デジタル教科書を作成している方々に声をかけた。また,作成についてのTipsやデジタル教科書ならではのアイデアの紹介や利用の現状についても紹介していただく。

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8月9日(土)

【ITフェア】9:00−17:30

IT技術の進歩により,私たちの生活は大きな変化を遂げています。恒例のITフェアには,多くのコンピュータや教育関連企業の方にご出展をいただいております。各分野の「最新」「最先端」の技術の情報が入手でき,実際に機器やソフトを試すことができます。教育・研究素材の収集や交流の場として大変好評を得ております。ぜひITフェア会場にお寄りください。

展示紹介(PDF:874KB)
会場図(PDF:328KB)

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【分科会 口頭発表・ポスターセッション】

 口頭90本,ポスター29本の発表があります。 

口頭発表  8月9日  9:00-11:55 16:00-17:55
8月10日 9:00-11:25
ポスター発表 8月9日 14:00-15:00(発表者立ち会い時間)

詳細は分科会タイムテーブルをご覧ください。

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【レセプション】18:30−20:00

2日目の夜に行われるレセプションは参加者のみなさまを歓迎する立食パーティ形式です。和やかな交流,懇談の場です。お気軽にご参加ください。(参加費:5,000円)

 

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8月10日(日)

【セミナー1】12:00−13:40
高校生に聞く!「こんな情報教育が受けたい」

小中高校に情報教育が導入されて約三十年が経ち,中学校の技術家庭科での情報分野の導入や高等学校の情報科の新設からは十数年が経過しました。当初から,大学や企業からはこの新しい教科や内容にさまざまな期待が寄せられており,その成果について検証が必要であると考えています。

その一方で,日々刻々と変化するテクノロジーや,情報化社会におけるコミュニケーションの変化など,すでに多くの情報教育担当の教員がついていくことが困難な現状があります。さらに高校生のスマートフォン所持率は100%に迫り,関連するさまざまな問題も発生している中で,情報教育に求められる学習内容の範囲は拡大し,多岐に渡っています。

現在,学習指導要領の改訂を経て,高校においては新カリキュラムへの移行が進行中です。新カリキュラムの成果と課題を,次期の学習指導要領に活かすためには,指導者だけではなく,学習者の視点も欠かせないと考えています。

情報教育を受けたはずの若者が,ICTを十分に活用できなかったり,ネット上でのさまざまなトラブルに関わったりすることが社会問題化している一方で,小学生のプログラミング教育が脚光を浴びたり,学校教育に飽き足らない生徒達が,インターネットのプログラミング関連サイトや動画投稿サイトの解説を見て独学でプログラミングを修得し,作成したアプリを公開している現状もあります。

情報教育の重要性が語られる一方で,小中学校では情報教育に関連した独立した教科がなく,高校でも3年間で70時間足らずの授業時間しかないという制約の下で,学校教育の中で学ぶ内容も限定的なものと割り切り,選択と集中が必要なのかもしれません。

これからの情報教育を考える上で,今の高校生にとって必要と感じられる知識やスキル,態度とはどのようなものなのでしょうか。このセミナーでは,高校生の視点から,高校生パネリストに現在とこれからの情報教育について語ってもらい,事前に撮影した全国の高校生のビデオインタビュー映像を交えながら,フロアも含めてこれからの新しい情報教育のあるべき姿について議論を深めたいと考えています。建設的な提案が生まれる場になることを期待しています。

パネリスト  今戸 優理(東京学芸大学附属高等学校2年)
工藤 凜太郎(広尾学園高等学校1年)
坂東 風香(北海道札幌旭丘高等学校2年)
横田 一城(早稲田大学高等学院2年)
コーディネーター 大橋 真也(千葉県立船橋啓明高等学校教諭 数学・情報担当)
高瀬 敏樹(北海道札幌旭丘高等学校教諭 情報担当)

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【セミナー2】12:00−13:40
「学修資源としての著作物と教材:利用と共有における課題と展望」
竹内 比呂也(千葉大学副学長,附属図書館長,アカデミック・リンク・センター長)  

今日,日本では高等教育の改革の必要性が政策的課題となり,盛んに議論が行われている。グローバル化,イノベーションといったキーワードが乱れ飛んでいるが,つまるところは,これからの日本の発展を支え,活力ある社会を生み出す人材をいかに育てるかということである。高等教育あるいは大学における学修の質的転換が喫緊の課題として認識され,各大学はアクティブ・ラーニングの推進や課題解決能力の涵養に取り組んできた。例えば,千葉大学においては,アカデミック・リンクというコンセプトの下,「自由度の高い学習空間」「学修のためのコンテンツ」「人的支援」という三要素の有機的結合による新たな学修環境の構築により,アクティブ・ラーニングを推進している。  

これらの要素のうち,「学修のためのコンテンツ」,すなわち電子的学習資源は,学生のアクティブ・ラーニングのために不可欠であるが,利用と共有のために必要な環境の整備に関しては様々な課題がある。学習,教育を目的とする電子的学習資源の利用は,高等教育の公共性に鑑み,可能な限り自由に行えるようにすべきであるが,現下の法制度あるいは利用に関する慣習は,情報通信技術を活用した新しい学修環境における著作物の利活用を十分想定しているとは言えない。その結果,実際に教材の電子化を行おうとしている教員に困惑をもたらしている。また,授業を担当する教員に権利者を特定したり,許諾を得るための事務処理を行うよう求めることは,彼らにとって過重な負担となる。これらのことは,著作物の利用を抑制するというマイナスの効果をも生んでいる。また,大学のコンプライアンスという観点からも大学の組織的な対応が必要である。

このような状況をふまえ,電子的学習資源の製作,共有化を促進し,また学習・教育において著作物を最適に利用できる環境を整備するための検討を行い,具体的な方策を提案,実行するために,千葉大学,東京大学など9大学により「大学学習資源コンソーシアム」が平成26年5月に発足した。本講演では,このコンソーシアムが構想する著作物の教材としての利用や教材の共有化のための環境整備などについて詳説するとともに今後の展開の方向について論じる。

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【セミナー3】14:00−15:40
「高校の情報教育」〜「大学入学時のメディアリテラシー教育」にギャップはあるのか?
-高校生から見て,大学生から見て-

ICTを利用した教育の環境はめまぐるしく変化している。その中でも小中高での環境変化は非常に大きい。電子黒板や電子教科書の導入,タブレットを利用した教育・学習など多種多様に行われてきており,正規の小中高教育現場だけでなく,塾や予備校などでも行われている。

大学におけるICTを利用した教育も大きく変化してきている。ICT機材を使うだけでなく,オンラインコンテンツを利用した反転授業のように,学びのかたち自体を変えるような試みが急速に広がっている。
このような状況を学習(学修)者たちはどのように受け止めているのだろうか。

高校生が大学入学後に必要になると感じているメディアリテラシー,大学生が入学時にメディアリテラシー教育に対し不安に感じていたこと,大学生自身が大学生活の中で必要であると実感しているメディアリテラシーについて,それぞれの立場からご報告いただく。

この報告の中で,彼らの中に世代差や,受けてきた教育・環境によるメディアリテラシーのデバイドが生まれているのか?生まれているとすればそのデバイドを埋めるためにメディアリテラシー教育はどのようにあるべきなのか?教育におけるICT活用の変容期に,高大連携の流れを視野に入れながら参加者とともに考えていきたい

セミナー1「高校生に聞く!こんな情報教育を受けたい」の議論を受け,大学のメディアリテラシー教育の現状を認識しながら,大学において「学生が求められるメディアリテラシー」「学生が望むメディアリテラシー」について,大学生・大学教員だけでなく今後入学される高校生の方も含めて議論を深めていきたい。(セミナー1とセットでのご参加を想定しております)

パネリスト  松本 英樹(日本ヒューレット・パッカード株式会社  プリンティンク・パーソナルシステムス事業統括 コマーシャルビジネス本部)
並木 俊之(日本ヒューレット・パッカード株式会社 人事統括本部ビジネス人事部)
上村 知恵子(NPO法人manaveeマネジメントチームCommunication部門Relationship Manager)
阿部 侑磨(NPO法人manavee 北海道支部代表/生物担当)
浅川 美沙紀(名古屋工業大学 工学部)

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【セミナー4】14:00−15:40
「CIEC会誌『コンピュータ&エデュケーション』をより良くするために   
-教育調査データの活用-」

改めて記すまでもなく,本会はあらゆる教育の場での「改善」を目指す会員の学術的組織である。そのような教育の現場の特徴的な事柄は,常に「人を対象とした実践の場」であることである。医療の現場でもヒトを対象とするが,その成果は比較的短時間に現れることが要求される。他方,教育の場合,その成果は少なくとも数年を経て現れるものと表現しても大きな異論は無い。成果即ち結果が現れる迄の時間が短ければ,軌道修正がこまめに行われ,フィードバック的な応答システムが「人(ヒト)を対象とした実践の場」に実現させることが容易くなる。
応答迄の期間が数年を要する教育の場合,従って,CIECが目指す新しい教育的取り組みは,十分な準備と検討が不可欠である。然もなくば,教育を享受する者への説明が果たせず,加えて,担当教員個人の恣意的な活動にも陥り兼ねない。
そうであれば,そうした十分な準備を下に集められた貴重な「教育調査データ」からは,最大限の客観的で貴重な結論を演繹すべく,当該判断の根拠とともに取り扱うことが肝要である。
編集委員会では,上記のような観点から,会誌に散見される所謂「教育調査データ」を活用する際の,一つの有力な手段である「統計的演繹」について,具体的なデータとともに,幾つかの事例を取り上げ,適切な統計的手法について解説する。これにより,会誌に投稿される教育の実践的改善の議論の客観性の向上に繋がればと考えている。
1件につき,15分程度の解説,10分程度の会場からの質疑から構成する。取り上げる統計的手法としては,会誌に投稿される教育データの議論をより深めるのに有益と考えられる,1)各種の比較検定,2)相関や関係性の議論,が中心になる。

パネリスト  田中 一郎(CIEC会誌編集委員長 金沢医科大学)
宿久  洋(CIEC副会長 同志社大学)
籠谷 和弘(CIEC会誌編集委員 関東学院大学)
中村  彰(CIEC会誌編集委員 秋田大学名誉教授)

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