各企画案内

プレカンファレンス 8月4日(土)

【プレカンファレンス】 携帯端末およびタブレットPC向け電子教材の自作ツールYOUSEE体験学習

講師 芦屋 充 CSE株式会社
(YOUSEEデジタルブック+デジタル資産管理システムの営業,技術サポート,機能開発企画を担当)

ネットブックに加え,iPadや同様の高機能タブレット型端末が登場し,携帯型情報機器の新たな主役として人気を博してきています。さらに,スマートフォンの急速な普及やWi-Fiサービスの全国的なエリア拡大とあいまって,モバイル・ラーニングの環境がさらに充実してきました。しかし,教材コンテンツをいかにして教員自身が容易に短時間で作成,配信するかということに関して,携帯端末特有の操作性の問題や教材開発アプリケーションの少なさなどから,オーサリングを含めて,実作業の面では様々な困難を伴っているのが現状です。今回のワークショップでは,まず,プログラミングなどの専門知識を必要とせず,効率的かつモバイル・ラーニングに特化した教材作成支援サービスとして高精細ビューアである3Dmallの技術から発展し,YOUSEEデジタルブックを開発したCSE社の開発担当者に,先進的な研究や実践をしてきている韓国でのデジタル教科書事情の報告とYOUSEEソルーションについての説明(30~60分程度)をしていただいた後,YOUSEEを使ったデジタル教材の作成方法の実演(15~30分程度)をしていただきます。その後,参加者が会場内のPCからデモサイトにログインして簡単な教材を試作し,持参したタブレットPCまたはスマートフォンを介して試作用教材を閲覧(ダウンロードも可能)する体験学習(30分程度)の時間を設ける予定です。

参加者:55名(事前申し込み者のみ)

司会 野澤 和典(CIEC外国語教育研究部会世話人代表,立命館大学)

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基調講演1 8月4日(土)

【基調講演1】 オープン・エデュケーションが変える日本の大学教育

飯吉 透 京都大学高等教育研究開発推進センター 教授

現在,知識基盤社会の成熟に伴い,急激な社会構造の変化に対応可能な高等教育システムの抜本的な刷新が,世界規模で求められている。一方,日本国内では,高等教育のユニバーサル段階への到達,少子化,大学の財政基盤の弱体化などによって,大学教育の「質の低下」「形骸化」「空洞化」が加速することへの懸念が高まっている。

このような中で,過去十数年間に渡り,インターネットやマルチメディアを利用した教育テクノロジーや教材の公開と共有が進められてきており,「オープンエデュケーション」と呼ばれる世界的なムーブメントとして多くの実践的・実験的試みを積み重ねてきた。日本においても,オープンエデュケーションを構成する「オープン・テクノロジー」「オープン・コンテンツ」「オープン・ナレッジ」の各領域において,まだ限定的ではあるが先駆的な取り組みがなされてきた。しかし,このような教育資産やサービスのオープン化が,グローバルな「教育的な知識や経験の共有と蓄積」やローカルな「教えと学びの質的な改善やイノベーション」に真に寄与するためには,「私たち一人一人が,自由に教え合い,学び合うことを支援する新たな知的環境」の構築が不可欠である。

本講演では,オープンエデュケーションのこれまでの推移と潮流を,幾つかの具体例を通して概観し,そこから得られた知見や課題などについて吟味と考察を行う。

さらに,現在の日本の高等教育の現状と諸問題を鑑み,「教育のオープン化がどのように解決策として機能し得るか」,またその実現のためには,「国・地域・大学の各レベルにおいて,どのような戦略・基盤整備・支援体制構築が必要か」についても提言を行う。

さらに,個々人のニーズや状況に応じ,多様な学習方法によって,いつでも必要とされる知識や技能を習得することができるような次世代の高等教育のシステムを「高等教育2.0」と位置づけ,その構築のための基盤となるオープンエデュケーションの可能性,また今の日本の高等教育界における固有の課題等についても言及する。

略歴:カーネギー財団上級研究員・同知識メディア研究所所長,東京大学大学院情報学環客員教授,マサチューセッツ工科大学教育イノベーション・テクノロジー局シニアストラテジストなどを経て現職。世界経済フォーラム グローバル・アジェンダ評議会委員(「テクノロジーと教育」部門),NHK日本賞審査委員などを歴任。国内外でテクノロジーを利用した教育の進展に関するビジョン策定・研究開発・啓蒙活動に従事。主著にOpening Up Education(MIT Press, 2008)[共編著]『ウェブで学ぶ – オープンエデュケーションと知の革命』[共著](筑摩書房, 2010)など。

発表資料

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基調講演2 8月4日(土)

アクティブラーニング(ピアインストラクション)の実践を通して学生の新しい学びを考える

溝上 慎一 京都大学高等教育研究開発推進センター 准教授

大学でのアクティブラーニング型授業を見ていると,知識の活用能力が強調されすぎて,知識内容を軽んじてはいないか,と疑うような実践例によく出会う。大学教員はこれまで,この知識や概念は大事だ,教えておかないといけないと知識内容に脅迫的なほどこだわってきたくせに,アクティブラーニング型の授業になるところっと態度を変え,形だけの調べ学習,インターネットでちょこちょことまとめただけの学生の議論や発表を受けて,「最近の学生もまだまだ捨てたもんじゃないよね」と拍手を送る。これはおかしい。

コミュニケーション力や種々の思考力(論理的・創造的・批判的思考力),リーダーシップや協調性などの技能や態度というのは,知識を媒介として育てられるものである。高次の認知機能(理解や記憶,思考,推論,判断,意志決定,問題解決など)を目一杯活動させることでこそ,言い換えれば,内容にこだわって「ああでもない,こうでもない」と頭をフル回転させてうならせてこそ,技能や態度は育つ契機を得るのである。薄っぺらい,形だけの活動をいくら模しても,技能や態度は育たない。

ピアインストラクションは,ハーバード大学物理学のマズール教授が開発した一種のアクティブラーニング型の授業法である。クリッカーを用いて,問題解決と学生同士のピアコミュニケーションを構造化したものである。授業デザインは単純であるが,物理学の内容に徹底的にこだわってたどり着いた彼なりの授業法である点に私はいたく共感している。クリッカーは日本でもこれまでけっこう紹介されてきたが,その多くは,「クリッカーを使うと学生は居眠りをしません」「集中力が切れません」などというものであった。私はこの紹介には正直うんざりしてきたし,であるがゆえにクリッカーにも魅力を感じなかった。なぜなら,私だったらクリッカーを用いずとも,私のやり方で学生を授業に集中させることができるからである。しかし,問題を提示して,理解の具合を即座にフィードバックして,さらに異なる考えや理解を持つ他の学生と議論をさせる,そうした授業がクリッカーによって,ひいてはピアインストラクションによって実現するとするなら,これは私にとって新しい意味を得る。

当日は,2012年前期の授業(150-200人程度の講義型授業)で実施したピアインストラクションの成果をもとに,大学でのアクティブラーニング型授業,学生の新しい学びについて考えを報告したい。

略歴:1994年神戸大学教育学部卒業,2003年京都大学博士(教育学)。1996年より京都大学高等教育教授システム開発センター助手,講師,2003年より准教授。大阪府立大学学長補佐(兼任)。専門は青年心理学(自己形成,分権的自己観),高等教育(学生の学びと成長,アクティブラーニング)。青年心理学会理事,発達心理学会理事,大学教育学会理事,Journal of Adolescence Editorial Boardほか。著書として『大学生の学び・入門-大学での勉強は役に立つ!』(有斐閣2006),『自己形成の心理学-他者の森をかけ抜けて自己になる』(世界思想社2008),『現代青年期の心理学-適応から自己形成の時代へ』(有斐閣2010)など多数。

発表資料

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シンポジウム1 8月4日(土)

【シンポジウム1】CIEC15周年記念国際シンポジウム すぐそこまできた「未来の教室」を創造する

コンピュータ室に行かずとも,ひとりひとりの机の上にタブレットPCが備わった教室。頑丈なタブレットPCにはいくつものデジタル教科書や教材がおさまっている。インターネットからの最新情報を取り上げ,電子黒板を使いながら授業が進められていく。少し前までは考えられなかった風景であるが,日本でもこのようにICTを用いてデザインされた教育の実証研究が開始されている。

1996年,コンピュータやネットワークをいかに教育の革新につなげるかを考えようと産声をあげたCIECであるが,15年の歳月を経て遠い夢物語であった「未来の教室」が現実的になってきた。もちろん,ただ道具がアナログからデジタルに変わって便利になっただけではない。学びのスタイルの変化が学びの本質そのものの変化へと導かれていかなければならない。

本シンポジウムでは,すでに州のすべての生徒にタブレットPCを配布した教育を展開しているオーストラリア ニューサウスウェールズ州での実践,総務省「フューチャースクール推進事業」,文部科学省「学びのイノベーション事業」によって始まっている日本での教育の情報化の実証実験に携わっている方々に登壇いただき,すぐそこまできている,すでに手の届くところにまできている「未来の教室」のあるべき姿について議論を進めたい。

パネリストLenovoオーストラリア/アメリカ 教育事業関係者
Yoko Nishimura-Parke NSW州政府 情報教育担当
(オーストラリア NSW Education & Communities)
加藤 悦雄 北海道石狩紅南小学校(フューチャースクール実践校)
林  向達 徳島文理大学短期大学部(フューチャースクール有識者グループ)
モデレータ森  夏節 酪農学園大学
助言者武沢  護 早稲田大学高等学院/早稲田大学大学院

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シンポジウム2 8月4日(土)

教育イノベーションとしてのゲーム:新しい教育哲学から実践までを考える

従来から「ゲーム」は単に社会学的・民俗学的な議論のみならず,例えば経済学における「ゲーム理論」や経営学における「ビジネスゲーム」,あるいは幼児教育や初等教育における「学習ゲーム,教育ゲーム」等において,理論から実践まで多くの関心を集めてきていた。他方,最近ではデジタルゲーム,ネットワークゲーム,そしてソーシャルゲームといった若者を中心にしたゲームの生活化からゲーム産業の変容が加速している。また年配者のゲームセンターの社交場化等も話題だ。さらに,近時「シリアスゲーム」「ARG」「ゲームニクス」「ゲーミフィケーション」等が広く関心を呼ぶところとなってきている。

これらを俯瞰すると,単なる「教育手法としてのゲーム化」を超える,次世代の情報社会の諸相が見えてくる。すなわち,ゲームという概念が従来の「遊びの一形態」を超えて,大きく変容と多様化を加速し,情報社会のあり方まで変えつつあるのである。またゲーム化という行為が非現実空間における行為形成のみならず,大きくそれ自体が現実を動かすことに気づくであろう。リアルとバーチャル,リアリティとバーチャリティ,仕事と遊び,真面目と戯れ,知の学習と創出,模倣と創造,想像と行為…といった観点を持つとき,それは深く教育と情報社会のあり方に関わるものとなっていく。

つまり,「学びとメディア」の関係を考えるCIEC学会にとっては,教育哲学から教育実践に至るまでの問題と課題を投げかけてくる,避けては通れないテーマなのだ。

本シンポジウムは,この問題意識に基づき,ゲームと教育をテーマに理論と実践の両方に取り組む精鋭の研究者にご参集いただき,多様な議論を展開したいと考える。結論を出すシンポジウムではなく,具体的な事例を基にした多様な問題提起をしていくものとしたい。多くの方々の参加をお待ち申し上げる。

パネリスト武山 政直 慶應義塾大学経済学部教授
藤本 徹  東京大学情報学環特任助教
サイトウアキヒロ 立命館大学映像学部教授
一木 裕佳 株式会社バンダイナムコゲームス 新規事業部ゼネラルマネージャー
モデレータ妹尾 堅一郎 CIEC会長

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ITフェアインデキシング 8月4日(土)

毎年好評の「インデキシングタイム」を初日8月4日の基調講演とシンポジウムの間に設けました。インデキシングとは「目次」のことです。ITフェア出展の各社にステージ上で1分間の「私のブースは面白いぞ」「新製品なので来てね」とアピールをしていただきます。つまり,ブース全体の「目次」セッションです。これを見た参加者が翌日5日に興味があるブースへ直行することになります。

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イブニングトーク 8月4日(土)

恒例のイブニングトークは参加者のみなさんご自身で作る企画です。下記のテーマに分かれて軽食をとりながら,ざっくばらんに語り合います。みなさんの思いを伝え合い,情報交換をして実際の授業や活動に生かしていきませんか。(軽食と飲料を用意します:500円)

(1)学校防災と被災後の学校教育の課題について考えよう

主催者:綾 皓二郎 石巻専修大学

東日本大震災から1年が経った。今回の大震災の体験と教訓を踏まえて学校防災について(児童・生徒・学生の安全確保,避難所や支援拠点としての学校の在り方,災害時における教職員の役割と市民との協働),さらに被災地の学校における現在の課題等について考えてみませんか。小学校から大学までの校種の違いを超えて交流し,これらの問題について認識を深めたいと思っています。被災地の小中高の先生方の報告をお待ちしています。(参加対象:学校関係者,市民,ボランティア)

(2)SNS時代の学生サポートのあり方について

主催者:木村 修平 立命館大学

SNS全盛の時代を迎え,大学教育におけるICTを用いての学生サポートのあり方も変容を迫られているのではないでしょうか。従来のようなコースツールや学内メールを通じての「内向きの」サポート手法と,たとえばTwitterやFacebookという「開かれた」新しいチャンネルを通してのサポート手法の両者について,それぞれの長所短所,今後の方向性,すでにSNSチャンネルを開設しておられる教職員の方々のご意見や授業への組み込み方法などを広く伺いたいと存じます。(参加対象:大学教員・大学職員)

(3)ビジネスシミュレーションゲームを使った意思決定プロセストレーニング

主催者:彌島 康朗 株式会社アントルビーンズ

社会環境の変化が激しい今,多様な可能性と迅速な意思決定追求することが必要です。このようなスキルは理解するだけでなく,繰り返し実践してみて身に付くものです。そこで公開されている実際のデータを元にビジネスシミュレーション教材を開発し,グループワークを通して,大胆な試行錯誤と細心な検証,柔軟な修正を実践してもらう講座プログラムに取り組んでいます。

この講座プログラムはモニター上の情報,少なめの時間,居合わせたメンバーという限られたリソースでシミュレーションをしつつ検証し,プレゼンテーションと質疑応答に取り組んだ後,次のセッションに備えて自グループの戦略を修正してもらう内容です。

受講した学生は実社会につながる場面設定の中で,“前に転がすディスカッション”や“タイムマネジメント”などビジネススキルのトレーニングを目指します。中でも,「情報活用」と「合意形成」に関しては,自身でも変化を感じ取ってもらったケースが多いようです。(参加対象:大学教員,キャリア教育関係者,学生) 

(4)これからの「発表」の話をしよう

主催者:角南 北斗 フリーランス

発表は「みんなが同じ時間に同じ場所に集まる」ことがある種の前提として捉えられている。しかし普段からUSTREAM,Twitter,SlideshareなどのWebサービスを利用していると,その場にいなくても得られるものが増えたことを感じると同時に,時間と場所を共有することはいかに貴重で贅沢かも実感する。Web制作者向けイベントなどと違い,研究会や学会発表の場は旧来の常識や慣習にとらわれ,まだまだその価値を最大化できていないのではないだろうか。本セッションが,発表という機会をより豊かにするための意見交換の場になればと考えている。発表の常連から聞くばかりの方まで,様々な方にぜひご参加いただきたい。

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自主企画型ワークショップ 8月4日(土)

新たな試みとしてワークショップを実施してもらうという「自主企画型」のセッションです。参加者の方々からワークショップに関する企画を公募し,下記のテーマで実施する事になりました。ワークショップという「学びの場」に関心のある方々や,口頭発表やポスターセッションでは伝わりにくい実践・研究上の効果や課題について意見交換の場を持ちたいと考えている方々の参加をお待ちしています。定員は各20名です。(軽食と飲料を用意します:500円)

(1)あなたの思考特性と行動特性を授業・講義で活かそう

主催者河口 紅 特定非営利活動法人さんぴぃす
共催者吉田 賢史 早稲田大学高等学院
篠田 有史 甲南大学教育情報センター
大脇 巧己 特定非営利活動法人さんぴぃす

このワークショップは

  • 1)参加者が,自らの思考特性と行動特性を理解する
  • 2)特性を活用した教師と児童・生徒のコミュニケーション力を向上させる
  • 3)脳科学理論を活用した新たな授業スタイルづくりの実践

を目的とした体験型ワークショップである。

経験豊かな教師であれば,児童・生徒の特性(思考特性や行動特性)を,自らの経験と照らし合わせ,一人一人に合った適正な個別指導も可能であるが,経験が少ない教師が児童・生徒と接する場合,教師みずからの思考特性や行動特性が,児童・生徒との適切なコミュニケーションを妨げるフィルターとなるだけでなく,教師が子ども達に対しわかりやすいと思い行なっている授業であっても,特性が異なる児童・生徒には,逆効果である場合も多々ある。

そこで,本ワークショップでは,まずは教師みずからが,ワークショップを通して自らの思考特性と行動特性の特徴を体感し,自分と異なる特性を持つ参加者との違いを認識することで,児童・生徒それぞれの特性に応じた授業や指導をおこなう際のヒントを手に入れることが出来る。 

今回,紹介する脳科学理論は,昨年のPCカンファレンスで口頭発表をされた早稲田大学の吉田先生や甲南大学の篠田先生が研究に取り入れているアメリカの教育学者ゲイル・ブラウニング博士によって開発された「エマジェネティックス」というプログラムである。

エマジェネティックスは人の特性を4つの思考特性(分析型,ディテール型,社交型,コンセプト型)と3つの行動特性(自己表現性,自己主張性,柔軟性)で表わすことが可能であり,日本ではまだあまり知られていないものの,海外では対人コミュニケーション力を向上させ,知的生産性の効率を高める効果が認められ,多くの企業や教育の場で導入され実績をあげているプログラムである。あなたの授業や講義をより良いものにするヒントがここにあります。

(2)教育のためのTOCの1つ「クラウド」を体験しよう!

主催者若林 靖永 京都大学経営管理大学院

結果を変えるには行動が持続的に変わる必要がある。行動が持続的に変わるには,考え方が変わる必要がある。したがって,ビジネス領域で言えば,マネジメントの基礎には,個人およびチーム成員の思考およびコミュニケーションの質が関わっており,成員の思考およびコミュニケーションの有効性が高まれば,結果としてマネジメントも向上し問題は解決され目標は達成される。

そこで私は,京都大学1年生向けの全学共通科目「ポケットゼミ」,および,京都大学経営管理大学院の専門科目で「クリティカル・シンキング演習」を2012年度開講する予定である。これらの授業では,クリティカル・シンキングの技法として,TOC for Education の提示する3つのフレームワーク,「ロジック・ブランチ」「クラウド」「アンビシャス・ターゲット・ツリー」について組織的に学ぶことを予定している。TOCはTheory of Constraint の略で,ゴールドラット博士をリーダーとして開発されたサプライチェーンやプロジェクトなどの問題を解決するアプローチである。教育のためのTOCは,TOCの論理思考を一般化し,児童生徒社会人など広く普及することで,人が自らの問題をしっかり受け止め,人と協働して取り組んでいく態度や技能を身につけていくことを理念としている。

本ワークショップでは,対立する問題状況をいかに解決するかについて,自らあるいは共同で取り組む思考プロセスを提案する「クラウド」について取り上げる。ワークショップでは,用意した教材にもとづき,模範例を示す講義,ガイド付きの練習,グループワーク,個人ワーク,ふりかえりとフィードバックというようにすすめることで,思考プロセスを体験する場としたい。(参考書)岸良裕司『全体最適の問題解決入門』ダイヤモンド社。デトマー著『ゴールドラット博士の論理思考プロセス』同友館。

(3)Learning 3.0

主催者長岡 健 法政大学
共催者塚原 謙治 産業能率大学総合研究所
岸 智子 リクルートオフィスサポート

学習という活動に対する様々な側面からの再吟味が進み,「教室における一方向的な知識伝達」のみを学習と見なす視点は,もはや過去のものとなりつつあります。実際,この10年ほどの間に,協調学習,プロジェクト学習,ワークショップといった参加型/双方向型の学習スタイルが浸透し,従来的な「授業」の枠組みを越えた様々な学習実践が行われるようになったことを,多くの教育関係者が実感しているのではないでしょうか。

ただ,新たな変化を目の当たりにし,様々な学習スタイルを経験してみると,この先にあるものが必ずしも「バラ色の未来」とは限らないように感じてしまうこともあります。学習を巡る今日の状況には,「変化の渦に巻き込まれつつも,渦を抜け出した後のことが気になり始めた」ような,何となく落ち着かない雰囲気が広がっているようです。さて,今起きていることの先には一体何が・・・?

「Learning 3.0」と名付けられた今回のワークショップでは,「次の次」の学習スタイルについて考えてみたいと思います。

今起きている「一方向から双方向へ」という学習スタイルの変化を「ソフトウエアのバージョンアップ」に喩えるなら,「ラーニング1.0」から「ラーニング2.0」へのシフトだと言えるのではないでしょうか。私たちは今,その渦の中にいます。でも,リリースされた「ラーニング2.0」のベータ版を試しているうち,多くの人々が新たな課題に気づき始め,次回のバージョンアップに向けたおぼろげな構想が徐々に囁かれ始めたようです。さて,今起きている変化のもう一歩先にくる「ラーニング3.0」は一体どのような学習スタイルでしょうか。

「次の次」の新たな学習スタイルについて,おぼろげなアイディアや,小さな思いつきをいくつも持ち寄り,「ソフトウエアのバージョンアップ」をメタファーとした思考実験(=参加型のアクティビティ)をマジメに楽しく行いながら,参加者全員のイマジネーションを総動員し,「ラーニング3.0」の姿を想像してみたいと思います。

(4)モバイルゲーム型学習ソフトを利用した授業体験と利用方法検討ワークショップ

主催者藤本 徹 東京大学
共催者大森 雅之 ベネッセコーポレーション

近年のICT技術の進展により,さまざまなデジタル教材やデジタル機器が開発され,学校現場への導入の取り組みが進んでいます。その一方で,デジタル教材やデジタル機器の学校教育への導入には,機器のメンテナンスや教材準備等の教員にかかる負担,有害情報やウィルス等の危険からの安全性の確保など,単にハード導入の議論をしているだけでは対応できない課題は多く,それらの課題を考慮して設計された学習ソフトが手軽に利用できることが重要です。その上で,指導する教員が目的に合わせて,その学習ソフトの特性を活かした方法で利用することが求められます。

本ワークショップでは,モバイルゲーム機「ニンテンドーDS」用に開発された学習ソフト「得点力学習DS」(ベネッセコーポレーション)を用いた授業を実際に体験しながら,モバイルゲーム機器用の学習ソフトを使った効果的な指導方法や教材としての可能性についてディスカッションを行います。

このソフトは,コンピュータゲームのデザイン手法を応用した「ゲームニクス」を採用して開発されており,中学校教科書準拠教材としての基準を保つとともに,コンピュータゲームの要素を取り入れて,学習効果を高めるためのさまざまな工夫が施されています。これまでにこのソフトを公立中学校の教育現場に導入した授業実践の取り組みが進められ,生徒が自らの学習課題を意識して学習するようになり,学習意欲や学習量の向上を通じて,授業に対する積極的な発言が多く見られるといった効果も示されています。

本ワークショップの主な対象者として,中学校教員,中学校教育に携わる方を想定しています。「得点力学習DS」の開発者や授業実践を行った教員とともに,このソフトを実際に試しながら,ご自身の教育現場での利用の可能性や課題を考える機会としてご参加ください。

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ITフェア 8月5日(日)

IT技術の進歩により,私たちの生活は大きな変化を遂げています。恒例のITフェアには,多くのコンピュータや教育関連企業の方にご出展をいただいております。各分野の「最新」「最先端」の技術の情報が入手でき,実際に機器やソフトを試すことができます。教育・研究素材の収集や交流の場として大変好評を得ております。ぜひITフェア会場にお寄りください。

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分科会 口頭発表・ポスターセッション 8月5日(日)

口頭発表103本、ポスターセッション29本の発表があります。

口頭発表8月5日 9:00-11:55 15:30-17:55
8月6日 9:00-10:55
ポスター発表8月5日 13:45-14:45(発表者立ち会い時間)

詳細は分科会タイムテーブルをご覧ください。

ポスター発表会場図

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レセプション 8月5日(日)

2日目の夜に行われるレセプションは地元ならではの食材や飲料をご用意して歓迎する立食パーティ形式です。多くの参加者,ITフェアご出展企業の皆様と交流できる和やかな懇談の場です。お気軽にご参加ください。

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セミナー1 8月6日(月)

【セミナー1】教育実践から視る未来-授業で何を学ばせたいか-

「教育の情報化」が学校教育のなかで進められてきたこの10年間で,小学校・中学校・高等学校の教育現場では,様々な変化が起こりました。無線LANの整備や,ICT環境の進展などのインフラ面においても,10年前では考えられなかったほど学校は変化してきました。しかしその一方で,旧来から行われている黒板を用いた一斉授業も,変わらず見られることも事実です。それではこの10年間,学校の授業実践においては,何が変化したのでしょうか。さらに,ディジタル教科書・ディジタル教材の採用や生徒のもつデバイスの多様化など,コンテンツや機器の面でも新たな授業スタイルの変化を助長する要因が増えてきています。これらのことを合わせて考えると,これからの10年間は,新しい学習指導要領に基づき,授業内容や授業方法が,確実に変化することと思われます。

このセミナーでは,まず,京都市桂徳小学校の山本直樹教諭のICT活用の豊富な授業実践からその成果などを報告いただくとともに,現在の課題や問題点を指摘していただく予定です。次に,関西大学中等部高等部の江守恒明教諭より,ICT環境がある程度整備されたことが想定できるそう遠くない将来,生徒は何を学ぶことになるのか,また,教師は何を学ばせたいのか,生徒と教師は何を学びあうことになるのかなど,授業実践をふまえながら学びの未来像を語っていただきます。その後,会場の皆様とともに「将来の学び」に対応する教師の役割とそれに関連する授業の組み立て方などについて議論していきたいと考えております。このセミナーは,教育に対する意欲をより高めたい,あるいは,実践における学びを一歩でも先に進めたいと考えておられる先生方を対象に,参加いただいた方々にとって,今後の授業実践の一助となることを目的としています。また,この本セミナーにつづくセミナー3は大学における学びについて小中高部会のセミナーでの議論をふまえながら討議していく予定です。参加いただいた皆様とともに,未来の教育実践について「学びあい」を実現したいと考えています。

授業実践報告山本 直樹 京都市立桂徳小学校
授業実践報告江守 恒明 関西大学中等部高等部教諭
モデレータ吉田 晴世 大阪教育大学教授

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セミナー2 8月6日(月)

【セミナー2】CIEC会誌『コンピュータ&エデュケーション』をより良くするために-歓迎される原稿とは-

CIEC会誌「コンピュータ&エデュケーション」誌は,コンピュータやネットワークを活用した教育や教育実践に関する研究を「論文」や「活用事例」にまとめて投稿し発表する場として,1996年の創刊以来,32号まで発刊を重ねてまいりました。「教育」を基本軸に様々な分野からの投稿が見られるのも,本誌の大きな特徴の一つです。

会誌をより充実させることを目的に,PCカンファレンスではこれまで3回にわたり,編集委員会がセミナーを開催し,「会誌『コンピュータ&エデュケーション』をより良くするために」という一貫したテーマのもと,論文の書き方,リサーチの方法,なぜリジェクトされるのかについて皆さんと考えてきました。これらの内容をふまえ,4回目となる今回のセミナーでは,「コンピュータ&エデュケーション」誌ではどのよう投稿を歓迎するのか,についてご紹介する予定です。投稿原稿のカテゴリーとしては,「論文」,「活用事例」,「Software Review」,「私の意見」がございますが,それぞれどのような内容のものが想定され,また歓迎されるのかについて,ご紹介したいと考えています。今回のセミナーにふるって参加下さり,「コンピュータ&エデュケーション」誌への投稿をお考えいただく機会にしていただければ幸いです。

パネリスト田中 一郎 金沢大学名誉教授
中村  彰 秋田大学大学院医学系研究科
中村 泰之 名古屋大学大学院情報科学研究科
菅原  良 北海道文教大学外国語学部

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セミナー3 8月6日(月)

【セミナー3】進んできた大学における教育の情報化と整備された学びの環境

小中高校だけでなく,大学においても教育の情報化がすすめられ,その基盤となる教育環境・学生サービスを情報面から支えるインフラが整備されてきた。学校側での基盤整備に加え,ハードウェアの進化・低価格化を背景としたパーソナルデバイスの普及にも拍車がかかり,電子教科書の導入ともあいまって大きな話題になっていることも言うまでもない。しかしながら,そのような情報化された学びの環境やツールを活用するにあたって最も重要なコンテンツや学びの質そのものについては更なる論議,研究が必要とされ,PCカンファレンスにおいても折に触れて論議されてきた。本セミナーでは,これまで「あるべきもの」として語られてきた学びの環境が「すでにあるもの」となりつつある現在,あらためてその環境の中で何を教え・学ぶべきなのか,さらにクラウドに代表されるネットワーク社会化が進み,情報・成果の発信・共有が個人レベルで容易になる中で学生の学びはどう変化していくのか,していくべきかを会場のみなさんとともに考えたい。

また本企画には,大学における情報インフラの整備やデバイスの提供に携わる立場でPCカンファレンスに参加する大学生協の職員に,いま小中高大を通じた学びの環境がどのように変容しつつあるのかを学ぶ機会として活用してもらう狙いもある。高校で学んできた学生たちが大学の学びの環境にスムーズに入っていけるように学生向けにPCを基軸とした学びの提案などを行ってきた大学生協が,今後も価値ある提案を続けていくために,現在から将来における大学の学びの環境の変化を知ることは重要なことだと考えている。

本セミナーの直前に行われるセミナー1における小・中・高校における学びの将来の姿についての議論を受けつつ,大学における学び・専門教育を話題の中心として,情報インフラを整備する側からは現状とこれからを,教育・研究する側からは今企図していることと今後のあるべき姿への提言を,学びの主体者たる学生からは現状をどのように捉え何を求めているのか,それぞれの立場からの報告いただき,それをもとに会場の皆様と議論を深めていきたい。※小中高部会担当のセミナー1とあわせてご参加いただくことを想定しています。

パネリスト
(候補者)
遠井 和彦 東芝情報機器株式会社PC事業部公共営業部長
DITT(デジタル教科書教材協議会)幹事会員
大学教員  大学生 (京都大学生を想定)

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セミナー4 8月6日(月)

【セミナー4】京都大学オープンコースウェアを活用したくなるわけ

2005年から始まった京都大学オープンコースウェア( OCW)は,学内で実際に利用している講義教材を,現役教職員がインターネットで公開するプロジェクトです。このセミナーでは,様々な分野の京大教員がOCWというメディアを活用した面白い授業展開の紹介や様々な活用例,今後の可能性をディスカッションします。例えば,文系の先生と理系の先生では,活用の仕方が全く違います。英語の先生は,ネイティブの英語の講義を,リスニングの教材に使いますし,黒板に板書をこよなく愛する先生は,学生から黒板を消しても後から見れるように,OCWに板書をアップする先生も居られます。また,ディスカッションの教材として,OCWにアップしておき,学生は授業の前に見ておき,授業ではディスカッションをするという先生も居られます。

  • 多くの人々に知識を知ってもらいたい  ・全学部の全学生が受講すべき性質のもの
  • よい教科書がない  ・講義内容の変化が大きい(たとえば情報教育など進歩の早いもの)などの課題については,良質の講義用コンテンツを,OCW化することで,講義にも自習にも使えるのではと思います。

また,京大OCWには,すでに1000以上の講義コンテンツがアップされています。海外には,このOCW講義を使って日本の勉強をしているマサチューセッツ工科大学の学生もいます。今後は,大学の知の財産であるOCWを使って,学習していけるのかということが,世界中の大学の存在意義を大きく変えるでしょう。

老若男女,学ぶことは,知のエンタティメントです。高齢化社会を迎える日本では,人生の後半において知的好奇心は,OCWで学ぶことも考えられるでしょう。今後,OCWの活用で何が得られるのか,皆さんと共に,学びます。

パネリスト 松岡 久和 京都大学法学研究科
坂出  健 京都大学経済学部
吉村 一良 京都大学理学研究科 / 理学部
錦織  宏 京都大学医学研究科 医学教育推進センター
近藤  直 京都大学農学研究科
西山 教行 京都大学人間・環境学研究科
年光 昭夫 京都大学化学研究所
須田 淳 京都大学工学研究科
Robert Smith MIT Computer Science Dept. 
モデレータ土佐 尚子 京都大学情報環境機構

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